前回は、株式投資信託(非上場)の分配金、中でもオープン型の分配金に
ついて記載しました。今回は、株式投資信託の税制に話を進めます。
今回も、どうぞ興味のある方だけ、ご覧ください。
また、間違い等がありましたら、どんどんご指摘いただければ幸いです。
なお、今回も、「株式投資信託」といえば、非上場のものを指すことにさせて
いただき、文中で、「株式投資信託」を単に「投信信託」と表現している場合
もありますので、ご了承ください。
【株式投資信託の分配金課税】順番としては、株式投資信託の売却に伴う課税から論ずるべきかも
知れませんが、流れの都合上、分配金課税から話を始めます。
株式投資信託の分配金のうち、ユニット型は普通分配金だけですが、
オープン型は、普通分配金と特別分配金に分かれます。そして、前回記述
しましたように、特別分配金は非課税です。
普通分配金は、株式の配当と同様に配当所得となり、総合課税となります。
以後、ここでいう分配金とは、普通分配金のことを指すことにします。
法令の本則では、配当所得に対して、所得税15%、住民税5%の合計20%
を源泉徴収して、これをもって課税関係が完了することになっています。
但し「貯蓄から投資へ」という政府の施策の下、軽減税率が適用され、今年中
(特例では来年3月末まで)は、所得税7%、住民税3%の合計10%を源泉徴収
して、これをもって課税関係が完了する、いわゆる特例期間となっています。
源泉徴収で一応、課税関係が完了していますが、もちろん、総合課税として
確定申告をすることも可能です。
確定申告することによって、所得控除が受けられる方は源泉徴収された税金の
一部が還付されることもありますし、円建ての株式投資信託の場合、一般的な、
所得の方なら、分配金の5%の配当控除(税額控除)も受けられます。
但し、確定申告をすることによって、還付金が戻ってくることもありますが、
追加納税となる場合もあります。申告内容によって、各人各様です。
また、市町村の国民健康保険の加入者の場合、確定申告で還付金があっても、
それ以上の国民保険料の負担増となることがありますので、注意が必要です。
【株式投資信託の譲渡損益と課税】まず、株式投資信託を売却した場合
、「解約請求」か
「買取請求」のいずれか
を選択します。
「解約請求」の場合の譲渡損益計算時の取得費(必要経費)は、購入時の
基準価額ではなく、前回解説しました個別元本が適用されます。
「買取請求」も同様に個別元本が適用されますが、「買取請求」の場合は、
購入時の手数料が必要経費として加算されます。
ですから、通常、売却の際は「買取請求」を指定する方が有利です。
「解約請求」の場合で、売却で利益が出た時は、配当所得となり、分配金と
全く同じ扱いとなります。すなわち売却益の10%が源泉徴収されます。
「解約請求」の場合で、売却損失が出た時は、株式譲渡損失となります。
「買取請求」の場合は、上場株式と全く同じ課税、すなわち株式等の譲渡所得として
分離課税となります。
株式等の譲渡所得も、法令の本則では、所得税15%、住民税5%の合計20%と
なっていますが、こちらも、「貯蓄から投資へ」という政府の施策の下、軽減税率が
適用され、今年中は所得税7%、住民税3%の合計10%の特例期間となっています。
特定口座の「源泉徴収有り」を選択しておれば、金融機関で10%が源泉徴収され、
これをもって、課税関係は完了となります。
一般口座や特定口座の「源泉徴収無し」を選択している人は、所得控除を超える
売却利益があれば確定申告が必要ですし、損失が出ても、3年間繰越しの確定申告
も出来ます。この場合は投資信託だけでなく、株式売買を含めた全体の損益通算を
した合計額が、分離課税の申請所得となります。
特定口座で「源泉徴収有り」を選択している場合、確定申告の必要がありませんが、
確定申告することも可能です。株式の場合と同様で、申告することによって、複数の
特定口座間の相殺が出来、源泉徴収された税金の一部が還付されます。
譲渡損失の3年間繰越しも出来ます。また、所得控除が受けられる方も、源泉徴収
された税金の一部が還付されます。
但し、配当所得の場合と同様、市町村の国民健康保険の加入者の場合、還付金
があっても、それ以上の国民保険料の加算となることもありますので、注意が
必要です。
【来年からの税制】証券税制の特例(軽減税率の適用)は、株式譲渡益ついては、今年末に、配当所得
の特例は、来年3月末に期限切れとなり、いずれも本則の所得税15%、住民税5%
に戻ることになっていました。
しかしながら、株式市場が低迷していることから、証券税制の新特例措置が国会で
可決成立しています。
内容は、「2年間、特例期間を延長するが、軽減税率適用に上限を付す」という
ものです。
すなわち、来年1月1日から経過期間として条件付きで2年間、株式譲渡所得
及び配当所得に対して所得税7%、住民税3%の特例が適用されることに
なりました。
但し、上限付きですから、株式譲渡所得が500万円を超えた部分、配当所得が
100万円を超えた部分は、所得税15%、住民税5%の適用となります。
そして、この場合は、確定申告が必要となります。
詳細は不明ですが、株式投資信託の売却は、全て上場株式の売買と同等扱い、
すなわち、株式譲渡(分離課税)に統一されるようです。そうなると「解約請求」
はなくなり、「買取請求」のみとなります。
また、配当所得は、従来は確定申告すれば、総合課税でしたが、来年から
MAX20%の分離課税の選択もできるようになります。そして、分離課税を
選択した場合は、配当所得と株式譲渡所得の通算も出来るようになります。
すなわち、分離課税を選択して確定申告すれば、株の配当や株式投資信託
の分配金が、株式譲渡損失と相殺できるということです。
但し、分離課税を選択した場合は、配当控除(税額控除)を受けることが
出来なくなります。
来年からの税制の詳細は、8月21日付の私の記事
「平成21年の証券税制の改正」をご覧ください。
以上で、5回に分けて連載しました、株式投資信託の記述を終わります。
次回は、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(リート)に話を進めます。
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