証券税制、中でも株式譲渡損益と分配金(配当)に対する税制は、昨年から
コロコロと改正され、右往左往させられています。
今年(平成21年)から適用される税制ですが、昨年春に一旦改正されて
いましたが、世界同時不況を受けて、今年春に再改正。結果的に、昨年春
の改正は一部を残して幻に終わり、根幹部分である税率については、昨年
までの軽減税率が延長されることになりました。
この秋、政権政党が変ったりしたら、来年以降、また改正があるかも知れ
ませんが、取り敢えず今年(平成21年)は、今決定されている税制が
適用されるものと思います。
そこで、今年適用される証券税制、特に株式譲渡損益と分配金や配当に
対する税制について、整理してみました。
今回は第1回として、「株式譲渡所得に対する課税」について記載します。
「分配金や配当に対する課税」については、日を改め、第2回として
記載したいと考えています。
証券税制に関する記事を書く際、いつもお断りしていることですが、税理士
の資格を持っていませんので、一般論になりますし、以下の記載内容には
私の勘違いや錯誤等もあろうかと思います。
その点をご承知置きいただき、実際に確定申告される場合は、具体的内容を
持って、最寄りの税務署に照会してください。
さて、まずは上場株式等の譲渡損益についての課税ですが、ご承知の通り、
給与所得や配当所得に適用される総合課税とは切り離されて、株式譲渡所得
として分離課税となります。
本則では、株式譲渡所得に対して20%(所得税15%、住民税5%)の課税
となっていますが、昨年までの軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)が
今年(平成21年)から平成23年まで、3年間延長されることになりました。
この軽減税率が適用されるのは、上場株式の売却益、上場不動産投資信託
(REIT)の売却益、及びETFを含む株式投資信託の売却益です。
非上場の株式投資信託については、売却時に利益がある場合、昨年までは
「買取請求」と「解約請求」の選択が出来、「買取請求」を請求した場合は、
株式譲渡所得、「解約請求」を選択した場合は、総合課税の配当所得でしたが、
今年からは全て「買取請求」すなわち、株式譲渡所得の扱いとなりました。
通常、売却益は、売却金額から取得費と売買手数料を差し引いて計算すれば
よいのですが、毎月分配金があるようなオープン型非上場株式投資信託で、
非課税の特別分配金を受取っていたら、その分を取得費から減額して計算
する必要があります。特別分配金については、次回にも触れさせていただき
ます。
この売却損益の計算ですが、証券会社や銀行の特定口座を選択しておけば、
金融機関側で計算してくれ、面倒な計算をする必要がありません。
さらに特定口座の源泉徴収有りを選択しておけば、金融機関側で代行納税
してくれるので課税関係は完了します。ですので、他の所得で確定申告を
する場合でも、株式譲渡所得については、確定申告に記載する必要がなく、
源泉徴収された部分に関わる所得は、税法上の合計所得金額に加算されません。
特定口座の源泉徴収無し及び一般口座を選択している場合で、課税対象と
なる株式譲渡所得がある場合は確定申告が必要です。
特定口座の源泉徴収有りを選択した場合でも、源泉徴収された税金の全部
または一部が還付される時や、年間の株式譲渡損益の合計がマイマスとなり、
これを翌年以降3年間繰越したい時は、金融機関から送付される特定口座
年間取引報告書(以下報告書)を添付して、確定申告をすることも出来ます。
還付されるケースとしては、複数の証券会社に特定口座(源泉徴収有り)
があり、A証券で年間30万円のマイマス、B証券で年間40万円のマイマス、
C証券で年間80万円のプラスといった場合で、株式譲渡所得の部分だけを
見ると、源泉徴収された分から約7万円の還付があるはずです。
上記の例で、C証券の年間プラスが60万円の時は、約6万円が還付され、
相殺した残りのマイナス10万円分が、翌年以降に繰越しとなります。
また前年までに、繰越し損を確定申告していた場合で、今年がプラスの
場合も確定申告することによって、繰越し損と相殺され、還付を受ける
ことが出来ます。
さらに、専業主婦とかで他に収入が無い場合、最低でも所得税で38万円、
住民税で33万円の基礎控除(所得控除)を受けることが出来るので、
確定申告をすることによって、源泉徴収された税金の全部または一部が
還ってきます。
但しここで、気を付けなければならないのは、確定申告すれば、記載した
分の株式譲渡所得が合計所得金額に加算されることです。大きな金額の
株式譲渡所得を申告すると、「やぶ蛇」となることがありますので注意が
必要です。
例えば、専業主婦の場合、夫側の配偶者控除に影響を与えたり、さらに
夫の会社の健康保険の扶養家族から除外されることもあります。
住民税の均等割がかからない、概ね31万円(市町村で異なります)以下
にとどめておくのが無難かと思います。
また、年金生活者の場合、大きな金額の株式譲渡所得を申告すると、
特定口座間のプラス・マイナスが相殺されて、一旦、源泉徴収された
税金が還付されますが、プラス分の残高が大きいと、後からそれを
上回る国民健康保険料や介護保険料が増額される場合があります。
特定口座で源泉徴収されている、株式譲渡所得の申告をするかどうかは
任意ですから、以上のことを踏まえ、報告書の中から、あまり大きな
プラスにならないように組合せ選択して、申告するのが賢明かと思います。
なお、今年から配当所得について分離課税を選択して確定申告すれば、
株式の売却損と相殺出来るようになりましたが、詳細は次回に述べさせて
いただきます。
特定口座の源泉徴収有りの場合、昨年までは金融機関から税務署に報告書は
送付されていませんでしたが、今年から提出が義務付けられたようです。
私の感覚では、金融機関側で確実に徴収納税されているのですから、必要
ないように思いますが、これってお役所仕事なのでしょうか?
というのは、昨年の税制改正時には、譲渡所得が500万円を超えた分の
税率が20%という税制が一旦決定されていたため、特定口座の源泉徴収
であっても、税務署としてはチェックのための名寄せが必要でした。
この税制が幻に終ったので、本来必要ないものと思いますが、一度通告
したものですから、財務省のメンツで残したということでないでしょうか?
最後は余談なりましたが、以上で、株式譲渡所得の課税についての記載を
終ります。
この続きは後日、第2回、「分配金や配当に対する課税」というタイトルで
掲載させていただく予定です。
にほんブログ村 ⇒ 
